フリー切符のススメ

この記事は、はんドンクラブ Advent Calendar 2022 - Adventar 2日目の記事です。

フリー切符

突然ですが、みなさんはフリー切符って使ったことありますか? フリーパス・周遊パスなどとも呼ばれる、定額で一定の期間鉄道に乗り放題となる切符です。乗車できる鉄道会社やエリアが決まっており、その中で乗り降り(途中下車)が自由にできます。鉄道ファンに限らず、旅行や移動にとても便利な切符です。

今日は、フリー切符についてあまり知らないけども興味はある方を主な読者として、フリー切符を紹介します。みなさまの旅行の参考になれば!

はじめに

この記事は、いわゆる鉄道ファン向けのものではなく、一般の方に鉄道に興味を持って頂くことを目的としたものです。路線名等の正確性など、重要でない部分についてはあえてわかりやすさを重視した表記としている箇所があります。

また、時間の許す限り調査したものの、情報が古い可能性があります。実際のご旅行の際は必ず一次情報を調べるようにしてください。

フリー切符利用の心構え

元を取ろうとしてたくさんご飯を盛る人

言いたいことはただ一つです。それは、"元を取る"ことを重視しすぎないことです。

せっかく乗り放題の切符を買うのだからと、正規運賃に比べて損をしたくないと考え、長時間列車に乗る旅程を組んでしまいがちです。このように"元を取る"ことに注力しすぎると、1日のうち移動時間が占める割合が増えたり、特急を使わず各駅停車を使うプランを組んでしまったりと、結果的に時間を浪費します。結果、観光に使える残り時間が少なくなり、旅行の満足度が下がります。無理しない旅程を組みましょう。

ちなみにこの記事では、フリー切符で乗車できる観光列車を紹介しています。観光列車のように、乗車自体を目的にできる列車は、列車に乗っている時間が多少長くても旅行全体の満足度が下がりにくいです。フリー切符と相性良し、と言えるかと思いますので、是非ご検討ください。

のりつぶし帳を使って記録する場合もあります

なお、鉄道に乗ることを主目的とするのりつぶし*1で使う場合は例外です。その場合は、確かに、"元を取る"という気持ちは重要です。

フリー切符の選び方

現在、様々な鉄道会社から様々なフリー切符が発売されています。しかし、切符に依って利用条件がかなり異なりますので、しっかり比較する必要があります。細かい利用条件を読むのは苦痛かもしれませんので、特に注意して欲しい点を解説します。

旅行したい時期に使えるか?

全てのフリー切符が年中発売されているわけではありません。旅行をしたい時期に発売されているかどうか確認しましょう。ちなみに、私の感覚では、年中発売されずに観光シーズンだけ発売されるフリー切符の方がお得な切符が多い印象があります。

また、有名な青春18きっぷは「連続しない任意の5日間」で使える切符ですが、他のフリー切符は「連続する○日間」でのみしか使えない場合が多いです。旅程と照らし合わせて、使えるかどうか検討してみてください。

特急に乗れるか?

特急列車

フリー切符における特急(新幹線を含みます)への乗車レギュレーションは、大きく分類すると以下の3種類となります。

  1. 乗れない(かつ、特急料金(差額)を支払っても特急には乗れない)
  2. 乗れない(ただし、特急料金(差額)を支払えば特急には乗れる)
  3. 乗れる(ただし、普通車自由席のみ)

特に1. と2. の違いに注意しましょう。 例えば、今回紹介している切符では、青春18きっぷは1. に、JR東日本近鉄の切符は2. に、JR九州の切符は3. に分類されます。JR北海道の切符は少し複雑で、特急は3. ですが新幹線は1. となります。

いつまでに購入する必要があるか?

締め切りを確認しましょう

  • 利用開始日の当日でも購入できる
  • 利用開始日の○日前までに購入が必要

の2種類があります。言い換えると、突然旅行を思い立って出発日に買おうと思っても買えない切符もあることに注意ください。

ちなみに、購入場所も注意してください。例えば、JR北海道のフリー切符は、「JR北海道の窓口でしか購入できない」かつ「利用開始日の前日までに購入必要」です。つまり、例えば首都圏から北海道旅行に行く場合、(北海道に友人が住んでいない限りは)初日にフリー切符が使えません*2

フリー切符の紹介

この記事の本編です。有名なものを中心に、現在発売されているフリー切符をいくつかご紹介します。

青春18きっぷ(JR各社)

青春18きっぷ

  • 概要: JR旅客鉄道の全ての普通列車が乗り放題
  • 特急・新幹線: 不可(差額を支払っても不可)
  • 日数: 5日(連続している必要なし)
  • 販売期間: 春休み・夏休み・冬休み期間
  • 費用: 12,050円

有名な切符ですので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。JRの各駅停車・快速・○○快速などにだけ乗れます。例えば、私鉄・元JRの第三セクター鉄道には乗れません。また、JRであっても特急列車には乗れません。詳細は調べてください。

この切符を使う場合、以下に注意してください。

  1. 特急料金を追加で支払っても特急には乗車できないこと*3
  2. 列車の遅延・運休になんの補填がないこと
  3. 鉄道に乗ることが主目的でない限り意外と使いづらいこと

鉄道は定時性の高い乗り物ですが、止まることもあります

特に地方では普通列車の本数は少なく、遅延した場合の列車の接続も保証されません*4。ですから、普通列車しか使えないこの切符で、ギリギリのプランを組んではいけません。それは、紙の時刻表からスジを理解して、列車遅延の時のリカバリープランを自力で組めるくらいの人が組むものです。そうでない方はともかく余裕を持ってプランを組みましょう。

なお、前述のとおり、青春18きっぷでは、追加料金を払っても特急には乗車できません。しかし、快速列車には乗車できます。しかも、指定席料金やグリーン料金などの追加料金が必要な快速列車も、追加料金を支払うことで乗車可能です。

観光列車もこれに該当するものが多数あります。青春18きっぷとの組み合わせでオススメできるものをいくつか紹介しますね。

リゾートビューふるさとJR東日本

www.jreast.co.jp

追加購入が必要な切符

姨捨駅はめっちゃきれいです。

南小谷駅で列車を逃してしまい、駅前の川で一人で水遊びをしている様子です。

まずは、首都圏から近い、リゾートビューふるさとです。長野駅を起点に、信越本線大糸線を走る快速列車です。車両自体は観光列車というほど豪華なものではありませんが、途中観光のためいくつかの駅で長期停車してくれます。例えば、姥捨駅には15-30分ほど停車しますので、列車から降りてスイッチバック*5する列車と目の前に広がる景色を楽しむことができます。途中、穗髙神社への参拝もできます*6

リゾートしらかみJR東日本

www.jreast.co.jp

追加購入が必要な切符

リゾートしらかみ車内(青池 HB-E300系)

www.instagram.com

東北地方のオススメはなんといってもリゾートしらかみです。青森駅秋田駅間を中心に五能線奥羽本線を走ります。車窓から日本海の景色が一望できることで知られています。うまく写真がとれなかったので、詳細はJR東日本のホームページでも見てください。

終点の秋田駅でたべたきりたんぽ

各種SL

www.jreast.co.jp

追加購入が必要な切符

SLみなかみ 車両 (D51形)

www.c571.jp

SLは快速列車として運転されることが多いため、青春18きっぷでも乗車できることが多いです。ここでは、群馬県山口県で運行されているSLを紹介していますが、SLは他の区間でも運行されていますので調べてみてください。ただ、普通列車よりもスピードが遅く、時間効率は悪いです。さらに、座席はとても堅く、全く快適ではありません。あくまでSL列車に乗ることが目的となります。

べるもんた(JR西日本

www.jr-odekake.net

べるもんたの運転区間JRおでかけネットより引用)

www.instagram.com

富山県高岡駅を起点に、氷見線城端線で運行される観光列車です。お酒も頼めますし、飲食もできます。お寿司が食べられるそうですよ。

実は乗ったことがありません。お隣の石川県を走っている「のと里山里海号」(JRではありません)がとっても素敵だったので、まあこちらも近所だしたぶん凄いだろ!と思って紹介しました。実際、コンセプトは非常に似ています。

あ、関係ないですが、のと里山里海号は中でワインが飲めます。

のと里山里海号の社内の様子(本文と関係ありません)

HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パス(JR北海道

www.jrhokkaido.co.jp

北海道周遊パス(過去販売されていたものであり、紹介する周遊パスとは異なります。)

追加でもらえる特急指定席券の例(追加料金不要のため、値段が¥***になっています)

  • 概要: JR北海道の全ての在来線列車が乗り放題
  • 特急: 可(普通車自由席は乗り放題/普通車指定席は4回まで追加料金不要)
  • 新幹線: 不可(差額を支払っても不可)
  • 日数: 6日(連続している必要あり)
  • 販売期間: ホリデーシーズンにのみ発売
  • 費用: 12,000円

めちゃくちゃオススメのフリー切符です。特急も、普通車自由席であれば乗り放題ですし、普通車指定席も合計4回まで無料で乗ることができます。それでこの値段です。JR北海道は特急中心のダイヤですから、特急に乗れるこの切符は北海道観光において最もコスパのよい切符かと思います。

注意点として、この切符は「利用開始日の前日までの購入が必須」かつ「JR北海道の駅でしか販売していない*7」です。ネット販売もありません。

私が利用したのは何世代か前の切符です。このときは期間が3日と短かったので、利用しやすかったんですよね・・・。なお、現在でも、きた北海道などのエリア限定であれば期間の短い切符が設定されているようです。ご興味ある方は調べてみてください。

なお、北海道の観光列車にはあまり乗ったことがないのでオススメは控えます。ちなみに、北海道の特急は本当に長い距離を運行しますし、雪で列車が遅れることは日常茶飯事です。時間管理に気をつけてくださいね・・・(上の特急券の所要時間も参考に)。

雪まつりにも行きました

でも、あまり旅行の写真がなかったので、網走監獄で食べたご飯の写真で許してください。700円です。

週末パス(JR東日本

www.jreast.co.jp

週末パスの利用範囲(JR東日本HPより引用)

週末パス

  • 概要: 首都圏+東北の一部のJR東日本・各種私鉄の全ての普通列車が乗り放題
  • 特急・新幹線: 不可(ただし特急料金/新幹線料金のみ支払で乗車可)
  • 日数: 2日(連続している必要あり)
  • 販売期間: 週末にのみ発売
  • 費用: 8,880円

期間が2日間と短めで使いやすい切符です。この切符だけでは普通・快速列車にしか乗れませんが、青春18きっぷと違い、特急料金を別途支払うことで特急に乗ることができます。更に、主に首都圏を除いたエリア内の私鉄(例: 長野電鉄上田電鉄会津鉄道伊豆急行富士急行鹿島臨海鉄道など)にも乗ることができます。

これまで紹介した青春18きっぷなどと比べると、2日しか使えないのに少々高い気がしてしまいます。でも実は、東京-仙台間を往復するだけでも元が取れるほどお得な切符です。単なる移動につかってもよし、観光列車に乗ってもよしの切符です。

なお、青春18きっぷで紹介したリゾートビューふるさとなどは、このフリー切符の範囲外です。代わりにこの切符+追加料金で乗れる列車をご紹介します。

お座トロ展望列車(会津鉄道

www.aizutetsudo.jp

福島県を走る会津鉄道の観光列車です。別途指定席券購入が必要です。この列車は山の中を進む列車で、ともかく車窓からの景色が良いです。一番のオススメは紅葉の季節に乗車することです(その分、競争率は高いです・・・)。窓のないトロッコ席、お座敷席などを選択することも可能です。

www.instagram.com

紅葉は本当にきれいなので、Instagramとかで写真をみて頂くと良いと思います。

あまりに写真がなかったので、会津若松駅で食べたラーメンで我慢してください。

サフィール踊り子(JR東日本

www.jreast.co.jp

東京・新宿から静岡県伊豆急下田まで運転している観光列車です。別途特急券が必要です。踊り子号はJRの伝統的な観光列車ですが、サフィールはなかでも新しい踊り子号です。「これから旅行に行くんだ」という気分を盛り上げてくれますね。

あー、写真がなくて困りましたね・・・。

写真がなくて申し訳ないので、伊豆に泊まったときの朝ご飯を貼っておきます。

箱根フリーパス(小田急

www.odakyu-freepass.jp

箱根フリーパス

箱根ケーブルカー車窓

箱根ロープウェイ車窓

首都圏から箱根観光をするためのフリー切符です。小田急線各駅からの往復切符(こちらは乗り降り自由ではありません)が付いています。

箱根観光の他、箱根方面でののりつぶしが必要な方はご検討ください(のりつぶしの対象にロープウェイを加えるべきかどうかは諸説あります)。

近鉄週末フリーパス(近鉄

www.kintetsu.co.jp

www.instagram.com

近鉄週末フリーパスの利用区間近鉄公式HPより引用)

特急に乗る場合に追加購入が必要な切符

  • 概要: 近鉄全線(特急を含まない)が乗り放題
  • 特急: 不可(ただし特急料金のみ支払で乗車可)
  • 日数: 3日(連続している必要あり)
  • 販売期間: 週末
  • 費用: 4,200円

関西からはこちらを紹介します。近鉄は、大阪・奈良エリアを中心に関西-名古屋間で営業している私鉄で、私鉄の中で最長の鉄道会社です。その広大な路線全域に、この料金で3日間乗り放題ですから、お買い得です(実は以前は3,000円で同等の切符が販売されていたのですが・・・)。なお、別途特急料金を支払えば特急にも乗車可能です。伊勢、志摩などの観光や、大阪ー名古屋移動ついでの観光におすすめです。

なお、伊勢エリア限定のフリー切符など、様々な切符が販売されていますので、旅の目的に併せて使い分けて見てくださいね。

www.instagram.com

伊勢神宮までも行けます。写真は消費期限偽装問題で販売中止中の赤福本店です。

みんなの九州きっぷ(JR九州

www.jrkyushu.co.jp

  • 概要: JR九州の全線が乗り放題
  • 特急・新幹線: 可(普通車自由席は乗り放題/普通車指定席は6回まで追加料金不要)
  • 日数: 2日間(連続している必要あり)
  • 販売期間: ホリデーシーズンにのみ発売
  • 費用: 18,000円(ただし、北部九州限定であれば、9,500円で販売)

JR北海道と似た切符です。少々高いですが、JR北海道と違って、新幹線にも乗れるところがポイントです。

3日前までに購入する必要があるので注意が必要です。ただし、JR北海道と違ってネットで購入可能です。

この切符はもちろん観光列車にも乗ることができます。九州は観光列車*8が非常に多く、それぞれ個性的な列車となっていますので、大変オススメです。いくつか紹介させて頂きますね。

特急 ゆふいんの森JR九州

www.jrkyushu.co.jp

由布院駅内にある足湯

ゆふいんの森の車内

ゆふいんの森車内2

博多駅から大分県の湯布院・別府という温泉街まで運転する、九州を代表する観光列車の一つです。乗車中に特筆すべきイベントがあるわけではありませんが、レトロな雰囲気を楽しめてオススメです。また、車内販売も充実しています。

特急 A列車で行こうJR九州

www.jrkyushu.co.jp

A列車で行こうの車内(JR九州公式HPより引用)

乗ったことがありません。熊本駅始発で三角線という路線を走りますが、熊本県内のみで完結します。運行距離が短く1時間もかかりませんので、気軽に観光列車に乗ってみたい方にオススメです。なお、車内にバーカウンターが設置されており、ハイボールが飲めます。

特急 あそぼーい!(JR九州

www.jrkyushu.co.jp

あそぼーいの車内(JR九州公式HPより引用)

乗ったことがありません。豊肥本線日豊本線を経由して熊本-大分間を結ぶ特急列車で、途中阿蘇にも停まります。名前のとおり、子供を遊ばせることのできるスペースが非常に広く確保されています。お子さんがいらっしゃるファミリーにオススメです。阿蘇観光にいかがでしょうか。

お年玉乗り放題きっぷ(現在は販売されていません)

ちなみに、以前は上記のような更にお得な切符があり、これを紹介しようと思っていました。でも残念ながら、2019年を最後に発売されていないようです。

あれ、そういえば、熊本の写真がないですね・・・。

熊本駅で買った駅弁の写真で我慢してください。

おわりに

いかがでしたか?

今回は旅行できる範囲が広いフリー切符を中心に紹介しましたが、ご紹介できなかったフリー切符はまだまだあります。興味のある方は調べてみてください。

もっと写真を探せれば良かったのですが、時間が無くやむを得ず代替の写真を使ったところもありました。ごめんなさい。

関西・東海圏が少ないのはわざとです。あまり使いやすいフリー切符がないのと、JR西日本のフリー切符がコロコロ変わるため筆者があまりよく知らないというのが理由です。

なお、フリー切符にこだわらなければ、オススメの観光列車は他にもたくさんあります。フリー切符はないという理由で紹介を見送ったけれどもオススメの切符もあります。また何かの機会にそういったお話もできるといいですね!

アドベントカレンダーはまだまだ続きますので、明日以降の記事をお楽しみに!

*1:日本中の鉄道区間全てに乗車すること。JRだけ対象とする人、上下線で別路線としてカウントする人など、様々な流派があります。

*2:メルカリ等で購入できる場合もありますが・・・。オススメはしません。

*3:新青森~青森間、宮崎〜宮崎空港間など追加料金が不要で特急列車普通車自由席に乗車できる例外や、「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」を購入すると北海道新幹線等の一部区間に乗車できる例外などはあります。

*4:そのほか、通常の切符を利用している場合、列車が止まっても振替輸送の対応を受けられる場合が多いですが、青春18きっぷではそういった対応が受けられまない場合がほとんどです。

*5:列車が逆方向に進むこと。鉄道ファンに人気があります。

*6:現在はコロナの影響で穗髙神社への参拝はできないようです。

*7:私が過去同等の切符を購入したときは、東京に1箇所だけJR北海道の窓口があり、そこで購入できました。でも今はその窓口は潰れてしまいました。

*8:本来、JR九州では観光列車のことを D&S列車と呼称しますが、ここではわかりやすさを優先して観光列車と記載します。