転職記録

会社を辞めて転職しました。

これはいわゆる「退職エントリ」ではなく,転職活動に関して感じたこと・気をつけたことをまとめる記事です。主に自身のために書かれており,次回以降の転職の参考にするための記録を目的としています。あまり他者に読んでもらうことを前提としていません。とはいえ,もし似た境遇の方が居れば参考になれば幸いです。

前職

そこそこ大きな日系企業で,職種はシステム開発の(一応)エンジニアです。社外の人にはシステム開発の(一応)テックリードですと説明してました。受託ではなく自社製品開発です。また,主な責任範囲は要件定義と基本設計です。ただし一部プロマネ業務もあり,プロジェクトのキック,プロジェクト中に発生した技術・金・スケジュールの課題解決をすることも責任範囲に含まれる場合があります。要するに手を動かす人ではありません。異動も何度か経験しています。また,退職時には(一応)役職がついてました。

転職理由

嫌なことがあって辞めようと決めた訳ではありません。もちろん多少の不満はありましたが,どの会社でも似たようなことはあるだろうなという類いのもので,転職の重要な理由ではありません。転職を決めたポジティブな理由は,大きく以下3つです。

新しい経験がなくなった

これが一番の理由です。

新入社員で最初に配属された部署は,私にとってミスマッチでした。専門外で,教科書に書いてあることも知らないような分野です。まあ,大きな会社ではよくあることです。ただ,この配属により,知識は非常に広がりました。業務量が多く常に多忙だったことと引き換えに,私は新しいことを知る・学ぶ・経験するのが好きなんだなということに気づきました。

ただ,学びや経験には限界があります。あるときふと,「あれ,この1年,過去と同じことを繰り返しているだけじゃね?」と気づきました。わかりやすさのために大げさに言うと,直面する課題がほぼ全部やったことがある課題で,話の途中で「ああこれ,どうせこういう問題だろうから,こうしないと解決しないだろうな」と分かってしまうのです。「これ進研ゼミでやったやつだ!」です。ここだけ聞くと単に仕事できる奴アピールに聞こえるのかもしれませんが,私にとっては仕事がすべて単純作業に見え,辛いものがありました。

育成や,よりレイヤーの高いマネジメントもやりました。しかし,それも大体全部同じパターンに集約されることに気づきました。もちろん,学べることはゼロではなかったと思います。ただ,そのペースが鈍化してしたのは事実で,今後部門が変わっても状況は変わらないだろうと思われます。

本業に割ける時間が少なくなった

入社直後はエンジニアっぽい業務が大半を占めていましたが,退職直前の業務比率は,ミーティング6割・事務仕事3割・エンジニア1割くらいです。大きな会社では,役職がつくと,誰も読まない報告書を書く仕事が増え,形だけの会議が増え,エンジニアリングの時間は減るものです。そして,本業に近かったはずの仕事も,誰々のパソコンが壊れただの,予算削減しろだの,なんとかの申請書を書けだの,本質的でないタスクが大半となりました。

このように,自己の本業(と思っていること)をやる時間はひたすら削られていく感覚がありました。加えて,本業以外の仕事すら新しいタスクはどんどん減ってきて,前項で説明した単純作業に感じられてきました。

将来への不安があった

いろいろな意味での不安です。まず,この会社は大丈夫なんだろうかという不安です。世間の感覚とずれていることが多すぎます。本業の業績は芳しくありません。定年まで働いたとしても,その頃に会社がどうなっているかわかりません。

しかし,一番の不安はこれではありません。「自分のスキルや業務経験が完全にこの会社独特のものである」という不安です。社内では一定の評価をしてもらえていても,転職のために自分のスキルや業務経験を整理すると「あれ?私は何ができるんだ?」となってしまいました。日系企業あるあるですよね。

また,私のいた会社は,皆がオールラウンダーであることが求められました。そのため,業務内容と自己の責任範囲がうまく説明できず,KPIもうまく説明できません。そうなると,転職活動をしようにも「結局なにを経験したんだっけ?なにができるんだっけ?」となってしまいます。

このように,自分のキャリアパスを考えると,名実ともに業務経験やスキルがあまりに不足していると感じました。自分の年齢を考えても,早く新しい経験をすべきだと思いました。

転職に際して重要視したこと

年収を上げたいだけを理由にしてしまうと失敗するだろうなと思ったので,転職活動の着手前にポリシーを定め,自分が何を目的に転職活動をするのかを意識できるようにしました。

  • 進め方
    1. いい転職先が見つからなかったら無理に転職しないこと
    2. 全ての意思決定の前に家族の同意を得ること
  • 転職先の選び方
    1. 年収条件
    2. 残業時間が現状と同等以下であること
    3. 現状リモートワークでコロナ後も継続の見込みがあること
    4. 数年後に自分のスキル・経験が語れるような業種にすること(具体的には,現職と何かしら関連がありつつも同じようなな仕事でないこと)
    5. エンジニアリングができる職種であること
    6. カスタマーワークが可能な職種にすること

最後の3つは,転職理由にも関係しています。今のご時世,何度も転職する可能性があると考えると,「なんかしらんけどちゃんとしてそうな実務経験がありそうにみえる」ことが大事だと思いました。実態は二の次でよく,そう見えるかどうかです。そこで,自分が将来行きたいなと思う可能性がある会社の求人票も含めて幅広く読んで,その必須条件や歓迎条件と自分の経験のギャップを考えました。そして,自分の技術領域が相当狭そうにみえることと,社内やメーカー向かいの業務が多くカスタマーフェイシングな仕事をほぼしていないことの2つが短所になりうると考えました(あわせて,プロマネについてはもう十分だろうとも感じました)。そのため,この3つが選び方に含まれました。

転職活動の進め方

転職サイト・エージェント

エージェント型の転職サイトが良かったので,特に理由はありませんがなんとなくビズリーチに登録しました。

登録すると,エージェントから(おそらく自動で送る設定になっているであろうテンプレートの)メールが大量にきてうんざりする訳ですが,よさげな求人を送ってくれた3名の方とそれぞれ電話で面談をしました。具体的な求人票の添付がないエージェントはガン無視しました。

職務経歴の整理

その後,職務経歴書を作りました。転職活動においてここに一番時間をかけましたし,一番苦労しました。実際,職務経歴書自体はあまり重要ではない(と思う)のですが,自分がどういう経験をしたのか,それを全く知らない社外の人に伝わるように話すにはどうしたら良いのかしっかり考えることが,そのまま面接対策になりました。要するに頭の整理です。赤の他人に社内のプロジェクトを説明するのには準備が必要ですし,単に説明するだけでなく自分が何をやったかをアピールできるストーリーに仕立てる必要があります。時間がかかりました。

また,私のいた会社では,部門構成やレポートラインは形式的なものであり,複数のプロジェクトがそれぞれ異なる体制・意思決定ルートを抱え,同時並行されます。そのため,職務経歴書上は所属部門単位ではなくプロジェクト単位で項目を記載しました。多分,こうしないと,抽象的な書き方にしかならず,何も伝わらなかったと思います。また,各プロジェクトでは以下のようなことを書きました。エージェントの方にも日英版両方添削していただき,まあまあな仕上がりになったと思います。

  • プロジェクトのKPIとその達成状況
    • 自身が特に貢献したものだけ書けばOK
  • プロジェクトにおけるチームの役割とフェーズ
    • 要件定義?設計?実装?PoC?試験?導入?維持管理?
  • チーム規模
  • チームにおける自分の役割
    • PLまたはサブリーダーなのか1人のメンバーなのか
  • 実施年数
  • それぞれで経験した技術領域

ちなみに,私は何でも屋さんだったので,広く薄く抑えている技術領域もあります。しかしそれを列挙して「実務経験しました!」と書くと嘘っぽかったので,そういうのは全部消しました。

応募と面接

応募する会社を決め,計4社同時にエントリーしました。リクルーターを2名使い,2社ずつのエントリーです。そして,両者に「別のエージェント経由でもエントリーしてます」と牽制しました。これが良かったのか悪かったのか未だに分かりませんが,根本的に競争が発生しないところに良い成果は生まれないと思っているので,まあ頑張って推薦してねというプレッシャーを与えたかっただけです。性格悪そうですね。

各社こんな感じで選考が進みました。期間はだいたいです。

  • A社(サービスプロバイダー)
    • 面接6回(うち技術面接2回)
    • 結果通知は各面接のだいたい3~4日後(最終結果は3日後)
  • B社(サービスプロバイダー)
    • 面接4回(うち技術面接1回)
    • 結果通知は各面接のだいたい1日後(最終結果は3日後)
  • C社(ITベンダー)
    • 面接4回
    • 結果通知は各面接のだいたい1日後(最終結果は1週間)
  • D社(SIer
    • 面接3回
    • 結果通知は各面接のだいたい2日後(最終結果は1週間)

エントリー後,最初の連絡が来るまでに1週間程度かかりましたが,その後は想像以上のスピードで進みました。振り返ると,面接を受けた期間はちょうど1ヶ月程度です。そうです,1ヶ月に17回も面接を受けたんです。マジで死にそうでした。とはいえ,面接準備は職務経歴書の記載時にほぼ終わっていたので,大変だったのは日程調整ですね。一度間違って他社の面接が入っている時間帯を候補として伝えてしまい,バッティングしそうでした。ただ,コロナ渦ということもあり,基本的に全ての面接がオンラインで行われたので,そういう意味では日程調整も楽だったのかもしれません。

なお,面接で聞かれたことはすべての会社でほぼ同じで,以下の通りです。ちなみに,どの面接官の方も職務経歴書はかなり読み込んでいただいたようで,経歴についての質問はあっても単なる説明を求められることはありませんでした。

  • 志望理由,転職理由
  • 家族は転職に賛成しているか?
  • 技術スキル
  • ○○に苦手意識はないか?
    • ○○には「英語」「コミュニケーション」「顧客対応」「新しいことへのチャレンジ」がよく入ります
  • ○○という問題に対応した経験とそこから学んだこと
    • ○○には「自分の主張が通らない」「チームがまとまらない」「お客さんが怒ってるけどすぐ対応できない」がよく入ります
  • 仕事内容はこういう感じだけど本当にやりたいこととあっているか?

ところで,私は「最後に何か質問はございますか?」というのが嫌いです。そもそも知りたいことは会話の中で聞くので,最後に言われても困っちゃうんですよね。そのため,無難な質問ストックを以下のように作っておき,特に聞きたくはないけどもなんか言うことにしてました。

  • あなたはなぜこの会社に入ったんですか?
    • (会話の流れで面接官が自発的に言うことが少ないため,質問が潰れることがほぼなく安心できる持ち玉。しかしそんなに興味はない。)
  • もしご縁があった場合に入社するまでに勉強しておいた方が良いことはありますか?
    • (志望度が高いことをアピールするテンプレート質問。しかし言われてもどうせやるつもりはない。)
  • どう評価されますか?このポジションでは具体的に何が期待されていてどうやったら活躍できますか?
    • (志望度が高いことをアピールするテンプレート質問2。しかしそれは入社後ちゃんと聞いた方が良いと思う。)
  • テレワークどうですか?はかどってますか?
    • (良いこともあるし悪いこともあるとしか言えない。今日は寒いですね以上の意味はない雑談。)

転職先を決めた理由

ありがたいことに複数の内定通知を頂きました。すると,私は何も頼んでいないのですが,エージェントが勝手に価格交渉してくれました。気づいたら条件が少しずつよくなっていったのはちょっと面白かったです。相見積もりは大事ですね。

決めた会社については言及しませんが,エントリー時には一番志望度が低かった会社で,合格通知を頂いた会社の中で年収が一番低かった会社です。決めた理由はたくさんありますが,以下が大きいかなと思います。

  • オファーについての細かな相談を全て無条件に受け入れてくれたこと
  • 上司が非常に論理的な話し方をされる方で信頼できそうだったこと
  • 総じてレスポンスが早く,入社後も意思決定が素早く行われる気配を感じたこと。特に,外資にも関わらず,日本で大半の意思決定が行われているように見えたこと(多分あってると思う)
  • エンジニア気質の会社な気がしたこと(多分あってると思う)

結局,業務内容や年収条件よりも,こういう他の要素が気になっちゃうものですね。特に最後は結構決め手かもしれません。前職で外資系企業と取引があり,その経験から,「営業気質の会社とエンジニア気質の会社ってはっきり分かれるんだなあ」と思ってました。うまく言語化できませんが,まあ,エンジニア気質の会社の方が楽しそうだなということが言いたいだけです。

タイムライン

  1. 転職を志してから転職サイトに登録するまで: 5分
  2. エージェントを吟味して連絡:1週間
  3. 職務経歴書の記載:2週間
  4. エントリー〜最初の面接:1週間
  5. 面接期間:3〜4週間
  6. オファー〜サイン:1週間

おわりに

いかがでしたか? 特に結びの言葉はありませんが・・・ 誰かの役に立てば幸いです。