ライブ配信向けOBSのサウンド設定(Win/Mac共通)

ライブ配信ツールとしてデファクトスタンダートになっているOBS。使い方の記事は腐るほどあると思います。でも,音声設定について書かれた記事って,意外と少ないんですよね。ということで今日は,私の設定をベースに,YoutubeliveやTwitchなどのライブ配信を前提とした音声の設定についての記事を書きたいと思います。

この記事では,私が特に大事だと思っている以下2点について解説したいと思います。すでに知っている部分は読み飛ばしていただければよいかなと思います。

  1. 音量のバランス
  2. OBSフィルタ設定

1. 音量のバランス

最も大事なのは「声」と「その他の音」のバランスです。「その他の音」とは,SE音やBGMのことで,ゲーム配信の場合はゲームから流れる音楽を指しています。バランスが大事な理由は,全体の音量は多少大きかったり小さかったりしたとしても視聴者側でボリュームを操作することで調整できますが,音量のバランスについては視聴者側で調整できないためです。

基本的には「その他の音」より「声」の方を大きくしておいた方が良いです。 SEやBGMは多少聞こえなくてもなんとかなりますが,特に自分の声がちょっとでも聞き取りづらいと,配信が成り立たないです。具体的にどの程度大きくすれば良いかという値は配信の性質に依存し,トーク中心の配信なのかゲーム音声がメインなのかによるので,一概に言えないです。私は平均音量が最低でも10dB程度差がつくように音量を調整することが多く,目安は10dB〜15dBくらい差をつけることかと思います。まあ,でも,比率は趣味で決めてください。調整は,その下にあるバーをドラックすることで可能です。

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音量のバランスのイメージ。上段が「その他の音(ここではBGM)」,下段が「自分の声」です。

ちなみにOBSの場合,配信前に録画を行ってその動画を見返せば,音量のバランスを簡単に確認できます。録画は「録画開始」ボタンを押すだけなので簡単ですね。

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録画設定。録画を終了すると,ファイルはこのフォルダパスに自動出力されます。ちなみに,ファイル形式を「mp4」にしておくと見返すのが楽ですよ。

ちなみに,「声」には,以下のようなものがあるかと思います。

  • 自分の声
  • (通話している場合)一緒に通話している人の声
  • (コメント等の棒読みちゃんを使っている場合)コメント読み上げの自動音声

少なくとも,自分の声と一緒に通話している人の声は絶対に同じ音量にしましょう。ここがずれているとものすごく聞きづらいです。Discordの場合,ユーザごとに簡単に音量を変更可能です。

ユーザーごとに音量を変える方法 – Discord - Discord Support

コメント読み上げの自動音声については,正直どういうバランスにしてもいいと思います。個人的には,コメントを全拾いする配信であれば,自分の音声と合わせるようにしていますが,ゲーム実況で一部コメントしか拾わない場合は,小さくすることが多いです。

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棒読みちゃんWindowsアプリ)の音声設定

2. OBSフィルタ設定

OBSのフィルタは本当によくできています。配信の音声品質を向上させるためにマイクを買い換えたりオーディオインターフェースを買ったりとお金のかかる手段を取る前に,まずはパソコン上で設定するだけで無料で品質を上げられる「フィルタ」という手段をとることをオススメしたいです。この記事では,もっとも効果的な自分の声(つまり,マイク入力)のみにフィルタをかける方法を説明します。

ちなみにフィルタというのは,音声の信号を処理する設定のことです。フィルタを使えば,自分の声(マイク入力)をそのまま配信するのではなく,ノイズの除去や動的な音量調節といった処理を行ったうえで自分の声を配信することができます。(ちなみに,フィルタの中には複数のフィルタを設定でき,前フィルタの出力がそのまま次のフィルタの入力となります)。

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フィルタのイメージ。フィルタは音声信号を入力・出力としてもち,この図の場合は入力がマイク入力,出力が配信用本姓となります。フィルタの中には複数のフィルタを設定でき,前フィルタの出力がそのまま次のフィルタの入力となる点もポイントです。

フィルタの追加方法

自分のマイクのオーディオ設定から,フィルタの設定画面を表示させてください。フィルタの設定は音声の入力デバイスごとに別個です。必ず自分が使っているマイク入力の音量バーにある歯車ボタンを押し,出てきたメニューから「フィルタ」を選択してください。

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フィルタの設定画面を出す方法。

フィルタの設定では,以下のような画面が表示されます。左下の「+」を押すとフィルタが追加できますので,以後の解説を参考にしてフィルタを追加してみてください。

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フィルタの設定画面。「+」を押して所望のフィルタを設定します。

各フィルタの設定内容

自分の声(マイク入力)に適用するフィルタは,以下4つをおすすめしています。環境によっては不要なフィルタもありますし,もちろんどれか1つだけ使うこともできます。まずは何も考えずに4つ追加してみることをおすすめします。各フィルタの詳細設定はあとから実施しましょう。

フィルタの追加方法です。ウィンドウ左下の「+」ボタンを押すだけです。ただし,フィルタには適用の順序性があります。オリジナルの音声入力に対して,上から順番に適用されます。よく分からないうちはこの順番のとおり適用するようにしてください。あとから順序を変える場合は,「+」の隣にある上下矢印のボタンを押してください。適用順序を変更できます。

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フィルタの一覧。順序性があり,上から順に適応されていくことに注意。

1. ノイズ低減

いわゆるホワイトノイズ(しゃべっていないときに入る「サーーーー」という音)が除去できるらしいです。正直,どういう仕組みかよく分からないですし,効果もきちんと確認したことはありません。おまじないだと思って入れておくと良いと思います。ただしこのフィルタは,必ずゲインの前に入れてください(でないとノイズを増幅しちゃうので;;)。

なお,このフィルタでは,「ノイズをより低減させる」とこと「元の音質をより維持する」ことがトレードオフの関係にあります。つまり,ノイズ軽減をきつくかけ過ぎると,自分の声もゆがんでしまう恐れがあるということです。さらに,実は他の,フィルタ(ノイズゲート)の方がノイズ除去に有効なので,このフィルタはきつくかけるよりも,おまじない程度に軽めにフィルタを適用して,音質低下を防ぐことを優先するのがいいんじゃないかと思っています。知らんけど。

数値はを小さくするほど(=バーを左側にスライドするほど),強い処理を行います。あまり小すぎる(例: -30dB)と音質劣化の恐れがあるので,大きめの数字(例: -3dB)にしておくことをオススメします。

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2. ゲイン

いにしえのネットラジオ時代に「マイクブースト」と呼ばれていた機能に相当します。単純にマイクの音量を増幅します。この数字をどうすべきかは,お使いのマイクと環境に完全に依存するので,音量メーターを見ながら各自調整してください。0dBがゲインを入れない基準の状態で,+方向に数字を増えせば増幅量を増やすことができます(逆に-方向では音量を小さくすることができますが,おそらく使うことはないと思います)

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3. ノイズゲート

ある一定以下の音をカットする機能です。これもホワイトノイズの低減に寄与しますが,それだけではなくマウスのクリック音など雑音を除去することもできます。Discordの音声設定でいう「入力感度」に相当します(Discordではこの設定を自動でやってくれますが,OBSでは自分で設定しなくてはなりません)。

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ノイズゲートはある音量より小さい音はミュートし,大きい音はそのまま(なにもしない)という動作をします。ここで,「ある音量」のことを「閾値(しきいち)」と呼びます。OBSでは「開放閾値」と「閉鎖閾値」を別々に設定できますが,まずは違いは深く考えなくてよいです。ただし,必ず「閉鎖閾値」≦「開放閾値」としてください。マイナスの値なので,大小関係を間違わないよう気をつけてくださいね。とりあえず,数dB程度差をつけておけば大丈夫です。

閾値はチューニングが必要です。以下のような値を探し,設定します。実際に音を出しながら,適切な値を探ってください。環境によりますが,-40dBから-20dBくらいの間で閾値を探すと良いと思います。

  • 閾値(開放閾値・閉鎖閾値)は・・・
    • マイクに向かってしゃべったときの最低音量よりも閾値を小さくする
    • マウスのクリック音などのその他雑音よりも閾値を大きくする

繰り返しとなりますが,開放閾値と閉鎖閾値の大小関係に気をつけつつ,数dB程度差をつけてそれぞれ設定してみてください。チューニングの際は,開放閾値と閉鎖閾値をセットで動かすようにするといいですよ。

その他設定項目(動作開始時間,保持時間,解除時間)については,開放閾値と閉鎖閾値の動作に差をつけるために必要な設定となります。ここはあまり意識しなくて良いと思います。

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ノイズゲートの動作イメージ。難しい場合は理解しなくて大丈夫です。実際には,開放閾値と閉鎖閾値を別に設定できるので,こんな単純ではありません。

4. コンプレッサー

コンプレッサーは,あまりに大きな音(例: 叫び声や笑い声)が入力された際,音割れを防ぐため,音量をある程度制限する機能です。「ある程度」というのがポイントで,完全に音割れを防ぐリミッターというフィルタもあるのですが,リミッターは音のゆがみが発生する可能性が高いフィルターのため,配信ではある程度音割れを防ぎ制限しつつある程度の音質を担保できるコンプレッサーが使われることが多いです。

コンプレッサーの詳細設定はとても難しいです。・・・・・・。私もよく分からないのでデフォルトのまま使っちゃいましょう!ただし,1点だけ注意があります。閾値が「ノイズゲート」フィルタの「開放閾値」よりも十分(10dB以上)大きくなるようにしてください。この値が開放閾値に近すぎると,音質が劣化する恐れがあります。

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コンプレッサーの動作イメージ。難しい場合は理解しなくて大丈夫です。

おわりに

この記事ではOBSの音量設定について私が普段行っていることを記載してみました。正直,環境と,配信の内容に依存するので,一概にこれがよいと言えないところは多いです。しかし,「よく分からないけどサウンド設定をちゃんとやってみたい」という方は,まずは真似をしてみるとよいと思います。